愛知県立豊明高等学校一回生3年目

on1978

現在員:14

 悪名高い管理教育TG校からの刺客として名を馳せていた。
 男子は頭髪刈上げ紺色靴下、女子は眉上のオカッパが必須、逆らえば半日殴られると噂されていたため、 年度初めクラス替発表の名簿の前でここにおのれの名前を見つけた時、ある者は唇噛み締め天を見上げ、ある者はその場に崩れ落ち号泣し、 又ある者は小さく「終わったな・・・」と呟いて絶望の笑みを浮かべていた。
 教室内で花火を炸裂させれば、どこのヤンキー校でも余裕でアウトである。
 一般的には、真面目生徒たちの顰蹙を横目に、不良グループがノリで蛮行に及ぶケースが多いが、 ここでは、違った。
 体育祭で使い余った吹き上げ花火を持ち出したのは、妙にご陽気な男である。
 悪い方面からの「おいヤベエよ、やめとけて」の制止を振り切って
「平気平気」彼は躊躇なくマッチを擦った。
 平気であろう筈はなく、机上で点火された吹き上げ花火は勢い良く天井の一部を焦がし、 濛々と立ち上る白煙は廊下に流れ、瞬く間に職員室にまで到達した。
 狼狽露わに駆けつけた教師は、薄靄残る教室内で燃え尽きた花火の残骸と、その横で不思議な微笑み浮かべる 学生を見つめて、しばし時が止まった。
 間もなく複数教師に両脇を抱えられて連行され、それを見送り居残った生徒達は
「さ、帰ろっか」
 見事に何もなかったように、微笑みながら清清しく日常に戻っていた。

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