![]() | |
現在員:16 |
![]() |
水曜六時限目の倶楽部活動選択で「一番楽そうじゃん」と仲間内で結託し皆で“園芸部”希望を出し、 後に「やっぱ園芸ダセえよな。変えまい」と希望変更を相談する際に忘れられて、半年一人きりで花を育てていた男は、 その頃から暗い目をして独り言を呟く時間が増えた。 “徒歩ラリー”という過酷な強制行軍に出発して間もなく、不運にも彼の腹具合が悪くなった。 郊外の行軍中に公衆トイレなどあろう筈もなく、仕方なく引率教員に願い出た。 「通り道のどこかの家に寄らせて下さい」 「学校の恥になるだろバカタレ。我慢せい」 学校の体面の前には、生徒一人の体調不良など論外なのが豊明高校。 最初はからかっていた友人各種だったが、男が次第に足取り遅れ無口になり顔は蒼褪め冷や汗すら浮かべる惨状に、 かける言葉も失っていた。 最終手段として最寄の草むらに飛び込めば、在学中どころか恐らく生涯彼の呼び名は“野グソ”になったろう。 万が一にも間に合わなければ、瞬く間に周囲に「なに?この臭い」が拡散し、 その日を限りに一人の青春が確実に、終わる。 しかし神様は、悲劇の男を見捨てはしなかった。肛門崩壊寸前で現地到着し、危機一髪惨劇を免れた男は後日、あの時を 「まさしく臨死体験だった」と、遠い目をして呟いた。 「ちょいとあんた。妙に白いねぇ〜。まさか塗ってんじゃないだろ〜ねぇ」 「いえ、地白です」 「洗いな」 「は?」 「今ここで、あたしの目の前で顔洗うんだよ。ほら、とっととやんな」 言うまでもない、女教師である。 |